米国株投資の外国税額控除って全額返ってくるの?

米国株

返ってこない人は意外と多い。

米国株投資で発生する2重課税とは?

税金に関する見解は税理士によっても異なります。
納税について不安がある場合は税理士の先生に確認することをオススメします。

既に投資を始めている方はご存知だと思いますが、株式投資を行う上で税金が発生するのは次のタイミングです。

税金発生イベント
  • 譲渡益が発生したとき
  • 配当金・分配金を受け取ったとき

つまり利益が発生したときに税金が発生するんですね。

税金というのはもちろん政府が持っていくわけですが、米国株に投資すると言うことは

  • ニューヨーク証券取引所
  • ナスダック

これらの証券取引所を通して株式の売買を行うことになります。

私達は日本国内で日本の証券会社に対して「この株買います!売ります!」とパソコン・スマホから入力していますが、実際の売買や配当金の支払いは米国内で行われます。

取引指示の流れ

個人投資家 → 日本の証券会社 → 米国の証券会社 → 米国の証券取引所等

つまり利益は米国内で発生します!

そして日本の証券会社にお金が入ってくるので

日本国内でも利益が発生します。

つまり、最初に米国で税金が取られ、次に日本で税金が取られます。

利益が1回発生すると2回税金が取られる。
これが2重課税です。

実際にいくらの税金がとられるの?

米国で発生する税金

冒頭で記述したとおり、税金は主に「譲渡金」「配当金・分配金」に対して発生します。

【米国】譲渡税

つい最近バイデン米大統領が富裕層に対する譲渡益の税率を従来の20%から39.6%に引き上げるという提案を出しましたが、我々日本人は何%の税金がかかるのでしょうか。

答えは0%です。

米国株投資において譲渡益に対して2重化税は発生しません

これは日本とアメリカが「租税条約」を締結しているからです。

租税条約とは簡単に言うと次の通りです。

租税条約のポイント

「2重課税の除去」等のために

「国外所得免除方式」「外国税額控除」を適用しましょう!

日米間の租税条約第13条2(a)でアメリカ国内での譲渡益に対する課税の免除が規定されています。
株式の5%を超えて保有している大株主の場合は課税されますが、一般人には関係のない話です・・・

財務省 租税条約に関する資料

【PDF】財務省 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府 との間の条約

【米国】配当金・分配金

前項「【米国】譲渡税」で記述したとおり、租税条約によって2重課税への対策が行われています。

ですが、配当金は全額免除されるわけではありません。

我々日本人が配当所得に対して米国に納める税金は10%です。
日米間の租税条約第10条2(b)

これが今回のテーマである2重課税となっている税金です。

ちなみに議決権付きの株式全体の10%以上を保有している場合は税率が5%に下がるので、節税対策として株式の大量取得も考えてみてください。

確定申告で2重課税を取り戻す!

前述のとおり、配当金については米国内で10%の課税が行われます。

そして当然日本国内でも課税されることになります。

日本国内で発生する税額は20.315%です。
(所得税15%+住民税5%+特別復興所得税0.315%)

では実際に100万円の配当金を受け取る際にかかる税金を計算してみましょう。

米国

100万円の利益に対して10%の課税

10万円の課税

90万円が残る

日本

90万円の利益に対して20.315%の課税

18万2835円の課税

71万7165円が残る

合計で28万2835円の税金が発生します。
税率では28.2835%となります。

日本株の場合は20.315%の課税ですから、7.9685%多く納税することになるわけです。

8%の差ってめちゃくちゃ大きいですよね。

この2重課税で発生する不利益を解消するために

確定申告で外国税額控除を行う必要があるんです。

外国税額控除って?

日本に住んでいる人が外国で所得税を支払った場合、次の金額を上限に日本で納める所得税額から差し引かれます。

所得税の控除限度額

(所得税額+復興特別所得税額)×(調整国外所得金額/所得総額)

県民税・市民税からも控除があります。
自治体によって割合が変わるので、ぞれぞれご確認ください。

「・・・で、いくら控除されるの?」

簡単に表現すると

「外国で得た所得に対してかかった所得税」です。

一つずつ確認していきましょう。

所得税額+復興特別所得税額

所得税の計算は総合課税・分離課税によって計算が異なるので、ここでは。

会社から毎年源泉徴収票を受け取っていると思います。
その紙の「源泉徴収税額」に1年間で支払った所得税の合計が記載されています。

この金額には復興特別所得税額が含まれています。

ここに譲渡所得や配当所得等で発生した国内源泉徴収金額を加算します。

調整国外所得金額

一言でいうと外国で得た所得の総額です。

配当所得と譲渡益の合計で計算します。
その他事業所得等がある場合はそれも含みます。

純損失や損失の繰越等は考慮しません。

所得総額

国内外を問わず、給与所得・株式の譲渡所得・配当所得等を合計した金額となります。

まとめ

所得税の控除限度額

(所得税額+復興特別所得税額)×(調整国外所得金額/所得総額)

所得税の控除限度額を上げるためには次の2つのポイントがあります。

所得税を増やす
  • 給与所得を増やして所得税をいっぱい払う
  • 国内株式の譲渡益・配当金を増やして源泉徴収をいっぱい払う
外国所得比率を高める
  • 米国株の譲渡益を増やす

逆に、所得税をあまり払っておらず、外国所得比率が低ければ限度額が低くなり、支払った外国税額の全額が控除されないことになります。

所得税が30万円、外国所得比率が10%であれば、上限は3万円
所得税が6万円、外国所得比率が1%であれば、上限は600円になります。

米国株の外国税額控除を満額受けるためには、それなりに収入が必要になるということです。

米国株の高配当投資を行う場合は、無駄な税金が発生しないかを事前に確認しておくことをオススメします。

年末には控除額の上限を確認して、場合によっては売却益を発生させて上限を上げるなどの調整も有効かもしれません。

考えなしに米国の高配当投資を行うと、思わぬ損失が発生する可能性があるので、注意しましょうというお話でした。

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